その青に溺れる
脊髄反射
いつもの朝、工程を終えて鏡に映る自分を眺める。
首筋から降りた左側の鎖骨の上部に印された薄紅の跡。
まるで蚊に刺されたばかりの跡は消えることはなく、いつ見てもそこに印されている。
此処からは見えないが恐らく項に近い首筋にも残されているはず。
少し伸びたボブの髪先が首元を隠し始めていた。
いつからかキスの回数が増え、跡を記すたびに上ずった声が出てしまい、息を押し殺して目を瞑っている。
そして終わりの合図として額にキスを落とされるようになった。
けれど、それすらもルーティンワークと化して何も変わらない、ただ通常運転の彼に振り回されていくだけ。
でも、最近では少し自由が利くようになり、携帯を取り上げられなくなった。
お蔭様と言うべきか、涼太とメールのやり取りが出来る。
彼と二人きりの個室で何もやることがなく、携帯に手を掛けてメッセージを送った。
【好きな人も彼氏も居ません】
昨日の深夜の質問に答えた言葉が口にもしてないのに喉に詰まった気がする。
【嘘だ、隠さなくてもいいよ、どっちにしろ俺が柚月を取るだけだし】
文字のせいか涼太の言葉が全く入ってこなくて、なのに指は勝手に動いて返信して
【声が聞きたいです……】などと出来もしないことを送っている。
【いつ空いてる?】と直ぐに返ってきた言葉に指を止めた。
別にいつ掛けてもいいのに考えて迷って、答えられずに彼の言葉に制される。
「柚月、携帯仕舞って」