その青に溺れる
彼女は不定期に彼の家を訪ねてくる。
密かに連絡を取り合ってるらしく、チャイムを三回ゆっくりと鳴らすのが合図。
彼に迎え入れられた彼女は長い髪を靡かせながら足を運び、自分と目が合うと可愛らしい笑みを投げかけてくる。
大きな荷物をベッドの足元に置くのを合図に自分は部屋を出る。
そのたびに彼に引き止められてしまう。
「なぁ、どこ行くの」
「ちょっとそこまで……」
未経験の自分でも彼が彼女と何をするか予想は大体出来る。
そんな場所に居られるほどの肝っ玉は微塵もない、寧ろ居られるほうが信じられない。
そしてドアの前で彼はキスをして印を付け、合図を落として言う。
「早く帰って来い、終わったら出掛けるぞ」
「……30分後に帰ります」
彼が口を開く前にドアを閉めた。
多分15分と聞こえた気もするけれど、その数字が何を示してるのかも自分には判らない。
コンビニに行く途中で横切る駐車場に見慣れた車を覗くと、後部座席には変わらず写真集とビデオがあって、心無しか増えたように見える。
ふと映りこんだ自分の姿に思う。
こんな自分のどこがいいのか、地味で目立たなくて、化粧してもしなくても代わり映えもせず、唇なんて薬用リップ塗ってるだけでセクシーさの欠片も見当たらない。
ふと携帯を取り出し、涼太の名前を指で触れて耳に当てる。
3回目のコールで優しい声が耳に落ちた。
「いきなりだね、嬉しいけど」