その青に溺れる
自分の言葉に何の反応もせずに彼は浴室へと向かって行った。
此処に来てからどれくらいだろう、と携帯のカレンダーを開く。
1ヶ月まで余り日数はなく、あれこれと考えてる間に彼が浴室から出て来てソファーに身を投げるように座る。
未だ上半身裸の彼に昨夜の事が思い浮かぶ。
どうしてあのようなことを言ったのか、どうしてそのような行為に至ったのか、
どうして自分は受け入れてしまうのか、
たった三つのどうしてを考え、彼の昨日の言葉にまた何とも言えない気持ちになる。
「どうして、キスするんですか……」
不意に口を吐いて言葉が滑った。
彼は短い息を吐いて言う
「またその話か」
「どうして私なんですか……」
思っても無いことが言葉として飛び出し、勢いに任せてぶつけた
「誰でもいいんですか……」
彼は自分の問い掛けに答えるでもなく腰を上げ、着替えをしている。
「どうして答えないんですか」
眉ひとつ動かさずシャツを着て髪型を直して、一度も此方を見ないことに腹を立て、言葉は止まらずに滑る。
「図星だからですね、そういうこと出来る人だと思ってなかった」
どうしてそんなことを言えたのか、自然に口が動いていた。