幼なじみの吸血鬼くんが本気を出したら。
「お前が何と言っても絶対にそうしない」

「嫌だよ!玲音は生きてよ!」

俺たちが話していると渦が話しかけてきた。

「くくくっ。お前らの愛は崩壊していっているぞよ。所詮、その程度か」

「舐めないで!自分が犠牲になっても相手を助けたいと思う気持ちは愛なのよ!!」

「そんな綺麗事ばかりで生きづらくないか?わらわが楽にしてやろう」

渦は俺たちの間にも入ってきた。

このままだと俺らが呪いの中に!

「お前のこと離さねぇからな」

「私も離れない」

俺たちは強く抱きしめ合った。

「もうやめましょう。歌子さん」

死を覚悟したその時、どこからか千代さんの声がした。

すると、渦の勢いは弱まった。

その瞬間を狙って、りりは渦の中に御札を投げ入れた。

しばらくして、渦はぱったり消えてなくなった。

よく前を見てみると千代さんと歌子さんが向かい合っていた。

「私と共に帰りましょう」

「お前だけ帰れ!!私にはまだやることが……」

「愛は誰にも引き裂くことは出来ないのです」

「黙れ!黙れ!」

激しい言い合いをしているようだった。

「私をもう一度呪いなさい。そしたらあなたの怨念は消えるでしょう」

「消えぬ!こやつらを呪わねば」

千代さんは歌子さんに抱きついた。

「いいえ。悪いのは私だけです。どうかこの子たちに害を与えないで」

そう言いながら何度も歌子さんの背中をさすった。
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