幼なじみの吸血鬼くんが本気を出したら。
「私はただ、羨ましかった。愛し愛される姿が。幸せそうな顔が」

歌子さんは大泣きしていた。

辛いとき、誰にも話せなくて鬱憤が溜まったままだったのだろう。

母親に話しをする子のような表情だった。

「気づいていた。レオン様が愛しているのは私じゃなくてあなただって」

歌子さんはあの醜い姿からもとの綺麗な姿に戻っていっていた。

「こんなことをした私を許して下さい。その罪は償います」

歌子さんはあの世に向かって歩き出した。

「私もお供します」

千代さんも歌子さんに寄り添う形で歩き出した。

「苦労をかけましたね。りりさん、玲音さん。私たちの分まで幸せになってくださいね」

千代さんは最後にそう言って歌子さんと共に消えた。
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