幼なじみの吸血鬼くんが本気を出したら。
あれ、どうしたんだろう。

何も起こらない。

目を開けると私は玲音にお姫様抱っこされていた。

「玲音…………」

玲音は吸血鬼のマントを羽織り、城のてっぺんに立っている。

「悪い、遅くなった」

安心して涙が出てきた。

やっと会えた。

「遅いよ、ばかぁ………」

「色々用意したら遅くなった」

色々って何よ。

「おい!入井、邪魔すんな!」

「お前には気分ぶち壊されまくってイライラしてんだ。俺からのプレゼント、ありがたく受け取れ」

玲音を指をならすと、国民の足元から火花が出た。

「お前、まさか………!」

「そのまさかだよ」

玲音を私を抱っこしたまま、森の方へ飛んだ。

「逃がさねぇぞ!」

大雅くんが追いかけてくるが、慌てる国民に阻まれてなかなか進めずにいた。

私は遠目でそれを見ながら、森の方へ目を向けた。
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