キス時々恋心
「ボクもやりたい!」
「アタシも!」
子どもたちは父親の洋服の袖を引っ張っておねだりする。
父親は困り顔で「お姉ちゃんたちのだからダメだよ」とおねだりを拒んだ。
そんな三人のやりとりを聞いて、初音と雪次郎は互いに顔を見合わせる。
「良かったら少しどうですか?」
初音が親子を誘う。
それでも、父親は「いや、でも……」と遠慮した。
父親が申し出を断ると、子どもたちはたちまち肩を落として眉根を下げる。
そんな子どもたちを見ていられなくて、雪次郎は彼らに一本ずつ花火を差し出して「いっぱいあるからやるの手伝って」と申し出た。
子どもたちは花火を受け取る前に、再度父親にうかがいをたてる。
「ちょっとだけだぞ」
父親がようやく折れると、子どもたちは一斉に「やったー!!」と喜びを爆発させた。
「子どもたちがすみません……」と頭を下げる父親。
“親の心子知らず”ではしゃぐ子どもたち。
子ども好きな初音は、二人と共に広い浜辺に出て花火を楽しんだ。