キス時々恋心
そんな問いかけに、雪次郎は下を向いて黙ってしまう。
初音は地雷を踏んづけたかもしれないと咄嗟に感じるが、どうフォローしていいか分からずに、彼が何か言い出すのを待つしかなかった。
「親、離婚してさ。父さんはしばらく会ってないけど多分元気。母さんは……ちょっと身体壊して入院してんだ」
雪次郎の回答は初音が予想していない事だった。
初音が知っている彼の両親は優しくていつも元気な人だったから。
驚きと動揺で手先がぶれてしまう。
限界まで大きくなった線香花火の火の玉はぽとっと砂浜に落ちて、吸い込まれていった。
「ごめんなさい……」
初音はやっとの思いでこの一言を口に出す。
「やだな。暗くなんなよ。」
大袈裟なくらいに明るく振る舞う雪次郎。
明るく振る舞われると初音の心は余計に痛んだ。
そして、わずかな時間差で雪次郎が持つ線香花火も消えて無くなった。