キス時々恋心
筋が通った高い鼻。
長いまつげ。
サラサラとした肌。
レンタル彼氏としてやっていける理由がよく分かった。
艶々とした唇が初音の心臓を必要以上にドキドキさせた。
女も度胸だっ……!
そう自分に言い聞かせ、勢い任せに自らの唇を雪次郎へと近づけた。
「……えっ?」
しばらくして、雪次郎は間の抜けた疑問符と共に瞼を開ける。
初音の柔らかい唇の感触が頬へと感じたからだった。
キス=唇だと思っていただけに、雪次郎は拍子抜けしている。
「キ、キスは……キスでしょ?」
初音は精一杯の強気な態度をとる。
彼の反応を見ているととても悪い事をしているように感じられたが、キスの直前でヘタレてしまったなんて口が裂けても言えない。
「うん。キスはキスだな。うん……でもさ……」
初音の意見を尊重しながらも納得がいかないといった様子の雪次郎。
そんな彼から逃げるように「花火、おしまい!寒くなったから帰ろう!」と勝手に帰り支度を始めた。
こうして、大人のデートにはほど遠い“年下デート”は幕を閉じたのだ。