キス時々恋心
2. 境界線
初めて利用したレンタル彼氏だった。
大人で落ち着いたデートが憧れだった。
それなのに、やってきたのは年下の大学生。
しかも、小さい頃には近所に住んでいた見知った男の子。
思い出すたびに『キスして』と言って瞼を閉じた彼の顔がよみがえる。
よみがえると、鼓動がドキドキと高鳴り、自然と頬が火照ってしまう。
これは恋じゃない。
楽しい時間も彼の優しさも甘いキスも全部が人工物。
彼はお金を払って与えられた商品なのだから。
“人工物”で“商品”なんだ……
そう思うと、無意識のうちにため息が零れてしまう。
こんなの、なんか寂しがってるみたいじゃない――…!
もう彼氏はレンタルしない。
こんな虚しい思いはもう懲り懲り
それに今は絶賛仕事中だ。
初音はブルッと首を左右に振って頭の中の雑念を振り払う。
余計な私情を挟んでいる場合ではなかった。
『お待たせ致しました。38番でお待ちのお客様、窓口までお越しください』
放送で次のお客様を呼ぶと、現れたのはなんとユキ本人だった。