キス時々恋心
「どうしてですか?」
「どうしてって、それは……」
彼女の問いに初音は答えに詰まってしまう。
尤もらしい理由がちっとも出てこない。
ただ、まっすぐな瞳をして“初音さんが好きだから”と告げてくる彼が少しだけ怖かった。
だから、試すような真似をしてしまったんだ。
「あなたが嫌だからだったんでしょ?いい年齢して嫉妬とか……恥ずかしくないんですか?」
遙の攻撃は続いた。
雪次郎の事が大好きでたまらないから、何も言えない初音に苛立ちは募るばかり。
初音は遙の言葉を聞いてハッとしてしまう。
雪次郎に対して抱いてきた言い知れぬ不安感、会えないだけで気になってしまう独占欲、これらの感情を彼女は“嫉妬”だと言い放った。
私は嫉妬をしていたんだ――…
これから先、レンタル彼氏として彼が接する全ての女性たちに。
初音は心の奥底にあった感情に気付いてしまった。
宮川 雪次郎が好きだと。