キス時々恋心
「もしもし。森崎です」
「初音さん?俺……ユキだけど……」
「うん」
今日会ったばかりなのに、なんだか彼の声がとても懐かしい。
電話で話をするのが初めてだからかなぁ。
なかなかその先の会話を進めてこない雪次郎を、初音は辛抱強く待った。
彼の息遣いだけを電話越しに感じる。
「……ちゃんと話がしたい。遙――…えっと……大学でのこともだし、他にも色々……」
雪次郎は所々言葉を詰まらせながらも自分の要件を初音に伝えた。
言葉を選びながら、彼なりに考えて連絡を寄こしてきたのだと分かる。
彼の友人を怒らせて、自分の無知さ加減が恥ずかしくて情けなくて、それを見られて逃げてきた自分とは大違い。
「忙しい……?」
初音が何も答えないから、雪次郎の不安そうな声が届いた。
「いや……えっと……、来週の水曜なら大丈夫かな」
初音は予定表を確認しながら雪次郎に告げる。