キス時々恋心
幸か不幸か、この日はクリスマスだった。
予定なんて入っているはずがない。
「その日、クリスマスだけど……いいの?」
「そういうそっちはいいの?」
二人して同じ心配を抱いて、またしばらく無言になった。
「俺はいいよ」
「私もいいよ」
互いに意思表示をする。
「じゃあ、大学のアトリエ部屋で待ってる。後で構内図送るから」
「分かった。それじゃ、またね」
「うん、また……」
そうして、二人は互いに名残惜しむように電話を切る。
通話を終えてしばらくして、初音のスマホが再び光った。
雪次郎からのメッセージ。
待ち合わせ場所に印がついた大学の構内図が添付されていた。
そして、すぐに次のメッセージが届く。
“ここで待ってる”
たった一言。
このたった一言が初音は嬉しくてたまらない。
その晩、初音はメッセージを開いたまま、スマホを抱きしめながら眠りについた。