キス時々恋心
依頼した相手は三十代の落ち着いた商社マン系の男性。
恋愛経験が乏しい初音は精神的に大人な男性からのリードを求めた。
流行の恋愛映画を観て、夜景の綺麗なレストランで食事をして、静かで趣のあるバーでお酒を楽しむ。
そして、締めには甘くてとろけるようなキスをしてさようなら。
そんなデートができたらどれだけ楽しいだろう。
初めてのレンタル彼氏で不安もあったが、楽しみの方がそれを上回った。
夕方六時半、駅前のロータリー前で待ち合わせ。
おしゃれな車でお迎えでも来るのかな?
そんな想像が膨らむ。
「あれ……、まだ来ない?」
初音は自らの腕時計で時間を確認した。
待ち合わせの時間は過ぎてしまっている。
もしかして、騙された……?
約束の時間から三十分が経過して、初音の脳裏に最悪の事態が過ぎり始める。