キス時々恋心

「初音さん、この間……遼さんと会っていましたよね。ホテルから出てきたところ見ました」

雪次郎の言葉に、初音の心臓はドキンと跳ね上がる。
あの時の姿を見られていた。

「あれはその――…」

驚きと戸惑いの中でどこから話していいのか分からず、初音は言葉を詰まらせてしまう。

「いいよ、別に。そもそも、初音さんが最初に選んだのは遼さんなんだし。実際にあったら素敵な人だっただろ?悔しいけど、俺だってそう思うから」

雪次郎は座っていた丸椅子から腰を上げて、初音の方へ向かって歩みを進めた。
雪次郎が一歩寄れば、初音は一歩下がる。
彼はジリジリと歩み寄って、ついに初音を壁際まで追い詰めた。
逃げることが出来ないように、壁に手をつく。

「俺、初音さんが好きだよ?初音さんは?もし、同じ気持ちじゃないなら……、初音さんが俺以外の男を見てるとか耐えられないから……もう会わな――……」


“もう会わない”


この言葉だけは聞きたくない。
強く思った初音は、咄嗟に雪次郎の唇を奪った。
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