キス時々恋心
***
窓の外はすっかり暗くなり、人の気配も来た時よりさらになくなって、この世界に雪次郎と自分の二人きりになってしまったような錯覚さえ起こさせる。
二人は教室の隅に並んで座り、少しでも距離があるのが互いに許せなくて、寄り添うように距離を縮めた。
「ユキ……ごめんなさい。私、もう彼氏はレンタルしないって言っておきながら遼さんと会ったりしたから気分悪かったよね。結果的に嘘付いちゃったわけだし……」
「うん」
「あの日、遼さんと会ったのはユキの事を聞きたかったからなんだ」
「えっ……俺の事を?」
雪次郎は目をパッと見開いて初音の顔を見た。
彼との密会に自分が関わっていようとは思ってもいなかったからだった。
「驚かせてごめん。でも、私ね……ユキの事何も知らなかったから。小さい頃は近所に住んでいたし、よく顔も会わせていたから何でも知っているつもりでいたけど、そんな事なかったの」
初音が語るのを雪次郎は静かに聞く。
ここからが本番。
初音はユキに気付かれないように深呼吸をする。