キス時々恋心

少し悩んで、雪次郎は首を横に振った。
レンタル彼氏は確かに効率良く稼ぐためにとても有効な手段だ。
しかし、今は一人じゃない。

自分の事だけ考えていれば良いという状況ではないと雪次郎自身も自覚していた。
どんなに大変でも、初音の事を思うと前の仕事に戻る気にはなれないでいた。

「元々こうするつもりだったんだ。大事な人を不安にさせたくないから、そんな人ができたらそうしようって思ってた。だから、初音さんが気にすることなんて無いんだよ」

雪次郎はそう言って、初音を安心させようとする。
しかし、それは彼女にとって逆効果だったようで、眉を下げて納得がいかない風な表情を浮かべた。

「だって、それじゃあ……ユキが大変な思いをするばっかりじゃない」
「俺は男だからいいんだよ」
「男とか女とか関係ないじゃない」
「あるよ」
「無いよ」

押し問答が続く。
雪次郎とこんな会話をしたことが無かったから、初音は思わずプッと吹き出してしまう。
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