キス時々恋心
「どうして私の名前を……?ていうか、私が頼んだ人はあなたじゃないわ……」
初音はなんだか急に怖くなってしまった。
よく考えたらこんなに都合良く素敵な人と映画のような時間を過ごせるなんてあるわけなかったんだ。
素性を知られてお金をゆすられるのか、もしくは身体……とか……
考えれば考えるほど初音の顔はどんどん青ざめていく。
そんな初音の様子を心配した男性は「ちょっと大丈夫……?」と声を掛け、何気なく彼女の肩に触れようと手を伸ばした。
「触らないで!」
初音は思わずヒステリックな声を上げてしまう。
その声を聞いた通行人がザワザワと注目をし始める。
さすがにこのままでは分が悪い。
男性は「とにかく乗って」と自らのバイクの傍まで初音の手を引いて、半ば強引にヘルメットをかぶせると、彼女をバイクに乗せて勢いよくその場を去って行った。