キス時々恋心

あれから何分が経ったのだろう。

初対面の男性の背中にしがみついて、乗り慣れないバイクで風を切っている。
長いトンネルを抜けると、右手に広大な海の景色が広がった。
いつの間にか日も落ちて、黒くうごめく波が彼女の不安をより(あお)った。


これで私の人生も終わったのかもしれない――…


誰もいない土地で身ぐるみ剥がされて置き去りにされるとか、無さそうでありそうな話だもの。

持っているお金は全部あげるから命だけは助けてくれるかな。

初音はバイクにまたがっている間、ずっとそんなことばかり考えていた。
待ち合わせの駅から一時間弱走って、街灯の明かりがともった海浜公園でバイクはようやく停まった。
二人はそれぞれかぶっていたヘルメットを取り、再び素顔を晒す。
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