夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
異性が近くにいるというだけで落ち着かない。朝は緊急だったこともあって、そんな考え自体が飛んでいたけど、パーソナルスペースに入られるのはどうにも苦手。
でもどうしてだろう。海堂先生が相手だとそこまで不快に感じないどころか、ドキドキしているなんて。
「腕は大丈夫か?」
「へ? 腕、ですか?」
「今もぷるぷるしてるだろ?」
海堂先生は今にも口元に手を当て笑いをこらえているようだった。
「き、気づかれてたんですか」
「ま、あれだけ心臓マッサージをしたら誰だってそうなる」
なんだかとても恥ずかしくて、穴があったら深くもぐって一生そこに潜んでいたい気分だ。
「言ってくれれば湿布薬を処方するぞ」
「いえ、大丈夫です」
海堂先生の口から私を気遣う言葉が出てくるなんて想像もしてなかったので面食らう。
「無理するな」
「無理なんてしてないですよ、でも明日は筋肉痛になりそうですけど」
「だったらがあとで処方しといてやるよ」
「でも……」
ただでさえ忙しいのに、そこまでお手数をおかけするわけには。
「桃子のおかげで患者は助かった。だから、気にするな」
そう言いながら、フッと笑った横顔に胸が熱くなる。救命にいるときは無駄口を叩く暇もないほど忙しいから、ここまで気さくに話してくれるなんて思ってもみなかった。