夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

「ところで、さっきから桃子って……」

どうして下の名前呼びなんでしょうか……?

えーっと、私と海堂先生の間にはそのような理由は一切ありませんよね。ただの上司と部下という関係。ドクターである海堂先生は、私には雲の上のような存在。

ましてや、次期院長なのだ。もうレベルがちがう。住む世界もなにもかも、凡人と貴族ほどかけ離れている。

「なぜって、聞いてないのか?」

涼しげな目元が私をとらえる。その目に見つめられると、まるで蜘蛛の巣にかかった蝶のように身動きが取れなくなる。

それにしても、なんだろう?

いつも悠然としている海堂先生が驚いたような表情を浮かべた。その言葉の意味も、表情の意味も私にはわからない。

「まぁいい、夜になればわかる」

エレベーターが目的の階へと到着し、海堂先生は足早に歩いて行った。

なんだったんだろう。夜になにかあるのかな。

疑問に思ったけれど、空腹が満たされる頃にはその疑問はすっかり頭から消え去っていた。


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