夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「そんなんでいいのか? あれがほしいとか、ここに連れていけとかどんな願いでもいいんだぞ」
そんなふうに思ってくれていたんだ?
少なからず気にしてくれていたという事実に胸が震える。
「ほしい物は特にないです。いきたい場所もすぐには思いつかないので、できれば一緒にゆっくりしたいです」
「一緒に、ゆっくり?」
なにかおかしなことを言っているのか、キョトンした顔で信じられないと言いたげだ。下から髪をすくいあげ、クシャッと乱す新さんのその仕草。
「ダメ、ですか?」
「ダメなわけがないだろ。これはまぁ、俺自身の問題だ」
「え?」
「かわいくそう言われて理性が持つわけないだろ」
えっ!
「桃子は俺の理性をかき乱すのがうますぎる」
「な、なにを言っているんですか!」
そんなつもりはない。普通に答えただけだ。
「誰に対してもそうなのか?」
「ええ!?」
なにを言うの?
「頼むからこれ以上煽らないでくれ」
なにも言えずに黙りこんでいると、マンションの駐車場に到着した。荷物が入ったボストンバッグを抱えた新さんは、反対の手を私に差し伸べる。
その紳士的な姿にドキドキせずにはいられない。