夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
そう言いきったところで、背後から腕が伸びてきた。キツくギュッと抱きしめられて、肩に顔を埋めてくる新さん。柔らかい髪が頬に当たってくすぐったい。
背中にばかり意識が集中して途中から進の声が頭に入ってこなくなった。電話しているというのになんて大胆な行動。
「桃子が無事ならそれでいいんだ。じゃあまたな!」
「え、あ……うん」
電話が切れたあとも、新さんの腕の力はゆるまない。それどころか、どんどん強くなっていった。
「あいつのところにいきたいか?」
「え……?」
あいつって、進のこと?
「桃子の気持ちを考えず、ここまで強引に進めたのは、おまえを誰にも取られたくなかったからだ。もちろんあいつも例外じゃない」
冷静だけど、弱りきったその声。本音で話してくれているのがひしひしと伝わって胸が痛い。
「五年間おまえに片想いして、なりふり構わず今日まできた」
初めて聞かされる本音に頭が追いつかない。
五年間、片想い……?
新さんが私に?
冗談でしょう?
「だが、桃子の気持ちが俺に向かないのは、思っていた以上にキツいんだ」
私を抱きしめるその手はかすかに震えていた。
「俺を好きになれ。どうしてもそれが嫌だというなら、俺の手を振りほどいてあいつの元へいけばいい」