夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

しれっとそう口にする海堂先生の言葉は説得力があるけれど、それを素直に受け入れ、ここへやってきたという行動に疑問を感じる。

私の中の海堂先生のイメージは、誰になにを言われても動じない強い信念を持っていそうに見えたから。

意に沿わなければ親でも突っぱねそうな勢いなのに、やはり彼も親には敵わないということなのか。はたまた結婚願望が芽生えたのか。

それがどうしてこういうプロセスに至ったのかはわからないけれど、父同士が親しげだったところを見ると、大方予想はつく。

きっとうちの父が海堂院長に頼みこんだのだ、娘にぜひ、と。だってそうでなければ、海堂先生側から私に会いにくるなんてありえない。

「俺はいいと思ってる」

艶のある薄い唇の口角が上がった。

「すみません、えと、『いい』とは?」

「結婚してもいいという意味だ」

「け、結婚……?」

は、はい?

まじまじと顔を見つめる私に、海堂先生は真顔でありえないことを口にした。

待て待て、落ち着け。結婚願望はあっても、私とって意味じゃない。

「だったら、私と会っていては時間のムダになってしまいます」

「なぜだ?」

キョトンと目を丸くした海堂先生は、わずかに眉をひそめた。心の底から私の言葉の意味がわからないと言いたげだ。

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