夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「なぜって、海堂先生は結婚したいとおっしゃいましたよね」
「したいとは言ってない。してもいいと言ったんだ」
「そうですか……では、そのようなお相手を他でお探しに」
「勘違いするな。桃子となら、してもいいという意味だ」
思考が停止した。目だけはしっかり彼を捉えていて、見つめ合うこと数秒。海堂先生は真剣な眼差しで、とても冗談を言っているようには見えない。
「他の女性とならしない。する意味がないからな。桃子だからだ」
私は今、夢でも見ているのだろうか。
長い長い夢を。
軽く伏せられた目が、再び私をとらえる。どこか熱を帯びたような、色っぽい瞳。その目に見つめられると、どういうわけか目が離せなくなる。熱が伝染してきて、顔がカーッと熱くなった。
「俺の妻になれ」
どこか遠くで聞こえた声にクラクラとめまいがした。
夢よ、これは絶対に夢だわ。
そうでなきゃ説明がつかない。私のような平凡な女を妻に所望している、海堂先生の言動が。
「どうして私なんですか?」
これまで親しかったわけでも、強引にアプローチをされていたわけでもない。
「早く身を固めて親にあれこれ言われるのを避けたいだろ? お互いに」
海堂先生は未だフリーズしている私に、やれやれと言いたげに肩をすくめた。