夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
ああ、そうか。そういうことなのね。
上がった熱が一気に引いていく。
海堂先生はただ、そういう意味で私を選んだ。そこに恋愛感情なんてものは一切ない。
「俺はおまえがいい」
はっきりそう言われてしまい、しばし呆然とする。従順で都合のいい扱いやすそうな女だと思われたのだろう。自分でもそう思う。父に言われ、反抗することもできず今この場にいるのもその証拠。
本気で懇願されたら断れないのは私の悪い癖だ。
だからといって、さすがに結婚はよく考えたいけれど。それでも父の気持ちを思うとグラグラと揺れ動いている。今はまだ考えられないだけで、結婚願望がないわけではないのだ。
いつかは誰かとと思っていたし、そのときになれば運命の人に出会えるかもしれないなんて、アラサー近くにもなって少女のような夢を見ていた。
時期が少し早まっただけだと思えばいいのでは?
でも、海堂先生が運命の人だとは思えない。ましてや結婚なんてもってのほか。そう感じる自分がいるのに、海堂先生は結婚相手としては申し分ないほどの相手だと考えている私もいる。
いやいや、でもやっぱりこんなのおかしいよね。
「えっと、あの、大変申し訳ないのですが」
「異論は聞かない」
言わんとしている言葉がわかったのか、先手を打たれてしまった。