夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「ですが」
「覚悟を決めるんだな」
「いや、あの」
覚悟?
やはり、海堂先生は本気で言っているのだろうか。もともと冗談を言いそうにないタイプ。プライベートは知らないけれど、少なくとも医療の現場で必死に命と向き合う姿はそう見える。
「相当気合いを入れたな」
「え?」
「よく似合ってる」
目の前の海堂先生は穏やかな微笑みを浮かべた。
「和が似合うよ、桃子には」
ま、また桃子って呼んだ。
どうして?
名前を呼ばれるたびになんだか落ち着かなくなる。それは決して海堂先生に呼ばれたからというわけではない、はず。着物を着てきたことにだって、海堂先生はちゃんと気づいてくれた。
いや、見ればわかるけれど、それを口に出して褒めるタイプではないと思っていた。だけどそれは私の想像でしかなく、初めて見る顔にただただ驚くばかり。
「ありがとう、ございます」
「礼はいらない。承諾さえしてくれれば、それでいい」
「承諾?」
「結婚のな」
開いた口が塞がらないとは、まさにこれ。私がなにを言っても彼は聞く耳を持たない。
「私、けっこう頑固ですよ。料理だって得意ではないですし、納得のいかないことがあれば意見だってします。家事も好きではありません」
従順で都合のいい女だと思って選んだのでしょう。だったら、そのイメージを覆してやればいい。そしたら諦めるだろう。ちょっとオーバー気味に正反対の自分を織り交ぜて言った。