夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

とことん弱いというか、抗えないなにかがある。

まだ籍を入れていないとはいえ、結婚式は済んだのだからもう立派な夫婦だ。少なくとも周りはそういうふうに見ているよね。

「おい、聞いてるのか?」

「へっ!?」

はだけたシャツから分厚い胸筋が覗いている。思わずそこに目が向いて、やたらとドキドキした。

「ルームサービスが届く前に着替えたらどうだ」

「あ、は、はい!」

立ち上がりバスローブ片手に脱衣所に駆け込む。どうしてこんなに緊張しているの。唇に温もりが蘇ってジンとする。鏡に映った自分の顔は、予想通り赤かった。

さっきのキスは私をからかっただけだよね。海堂先生は女性経験が豊富だろうし、キスくらいじゃなにも感じないのかもしれない。そう思うと、なぜかチクンと胸が痛んだ。こんなに意識しているのは私だけ。その事実が、とても悲しい。

脱衣所を出るとルームサービスが届いていた。テーブルの上にはおかずが数種類乗ったワンプレートの皿と米と味噌汁がバランスよく置かれている。味噌汁からは湯気が立ちのぼっていて、味噌のいい匂いがした。

「美味しそう」

「あっさりめがいいかと思って勝手に決めたが、和食でよかったか?」

「はい、大好きです」

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