夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

だし巻き卵と大根の煮物、さらには焼き魚やインゲンの胡麻和えなど偶然にも大好物ばかり。うれしくて頬がゆるんだ。

海堂先生はすでに座っていて、私を待っていてくれたようだ。

気を取り直して食卓につき手を合わせ「いただきます」と言ってからお箸を持った。

「目が輝きすぎだぞ」

「すみません、大好物ばかりなので」

「どれが好きなんだ?」

「だし巻き卵です」

「なら俺の分もやる」

「えっ! いいんですか?」

私の反応がよっぽどおかしかったのか、海堂先生はスッと目を細めた。クールなイメージが消えて、優しい雰囲気に変わる。

へえ、こんな顔もするんだ。

「ありがとうございます」

「うれしそうだな」

「はい、すごく」

美味しいものを食べてるときが一番幸せ。こんなときでも、美味しいものは美味しかった。人間、どんな状況でも順応できるようになっているのかもしれない。

「幸せそうに食べる桃子を見てたら飽きないよ」

「食べることは生きることですから、どうせなら美味しく食べたいじゃないですか。私、家庭を持ったら食事は必ず家族全員揃ってがいいと思っていて。母がそうだったように、団らんの時間を大事にしたいんです」

「団らんの時間、ね。当直の日は無理だけど、できるだけ桃子の希望に添えるようにする」

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