夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「え、あ」
そういう意味で言ったわけではないけれど、結果的にそう取られても仕方ない。これから家族を作っていくんだもんね。やはりまだ実感なんてわかないけれど、私の希望に沿うように努力するといった海堂先生の発言に驚いた。
形式上だけなら、そこまでする必要はないのだ。それなのに私の意見を尊重してくれるなんて。
「明日からふたりきりの生活が始まるんだな」
「そうですね、すみません、海堂先生のマンションにお邪魔する形になってしまって」
「いや、忙しくて新居を選びにいく時間が取れなかったからな。落ち着いたら、ちゃんとした部屋を探そう」
「いえ、住めれば私はどこでも」
マンションには一度も行っていないが、部屋が余っているというのでとりあえずの新居は海堂先生のマンションに決まった。
荷物はすでに送ってあるので、明日からは本格的に新婚生活がスタートする。
「家事は得意じゃないと言ってたな。ハウスキーパーを手配してほしいなら早めに」
ハウスキーパー……なぜ?
一瞬疑問に思ったが、そういえば家事が得意ではないと言い出したのは私だ。それをちゃんと覚えていたなんて、夢にも思わなかった。
「それは大丈夫です。得意ではないですが、ちゃんとがんばります」
たとえ形式上だけの結婚だとしても、最低限の自分の努めは果たしたい。高校時代に母を病気で亡くしてからは、忙しい父に代わって家事をやってきた。それでも得意ではないけれど、料理は好きだったりする。
一応ひと通りはできるので、相手が父から海堂先生に変わっただけだと思えばなんとかなるはず。
「なにかあったら遠慮せずに言え」
「ありがとうございます」
その後はお互い無言で食事を済ませた。ふたりきりの空間はもっと堅苦しくギスギスしたものになるかと思いきや、意外と居心地がよくてホッとしている私がいる。
それでも就寝前になると同じ空間に異性がいるとなると緊張するわけで、どうすればいいかわからずソファにちょこんと腰かけながら海堂先生の様子をうかがっていた。