夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「なんだ? 気が変わって俺と寝たくなったのか?」
「そんなわけないです!」
「そうか、じゃあ寝るぞ」
「いえ、あの」
「今日は疲れただろ? ゆっくり休もう」
あ、そっちの寝るって意味ね。紛らわしい。寝室に移動する海堂先生のあとに続いた。
スイートルームといえどベッドはひとつしかなく、部屋の真ん中にキングサイズの大きなベッドが鎮座している。
天蓋つきのいかにもお姫様っぽいベッドは、本物の夫婦が使う分にはロマンチックな雰囲気になっただろう。
「ここからこっちには入らないでくださいね」
ベッドの真ん中のちょうど半分を指さし、端っこの方へと身を寄せて横になった。ふかふかのマットレスの寝心地は最高で、疲れた身体にもってこい。
うん、今夜はよく寝れそう。
後ろの気配がピタッと止まっているのに気づき、ちらっと振り返ると海堂先生は目を瞬かせてあっけに取られているようだった。
「初めてだよ、そんな反応をされるのは」
やれやれと肩をすくめて、お手上げだというように力なく笑う海堂先生。モテる彼はきっと、今まで苦労なんて皆無だったはず。私の発言が理解できないというような顔をしている。
「私の意見はさっきと変わりませんので」
「まだ早い、か」
「それでは、おやすみなさい」
再び背を向け、目を閉じた。