夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
なぜだか楽しげに笑い、起き上がった。寝ぐせがついてピョンと跳ねた髪が、子どもみたいで笑いがこみ上げる。こんな無防備な姿は、緊迫している医療の現場では見れないのでなかなかレアだ。
「寝ぐせがついてますよ」
「どこだ」
「ここです」
ピョンと跳ねた部分に触れ、まっすぐに引っ張る。柔らかい髪はさらに変な方向へ。
「おい、なにを笑ってるんだ」
「海堂先生にも隙があるんだなって。いつも完璧だから驚きました」
「隙って、ただの寝ぐせだろ」
「そうですけど、それほど私のイメージでは海堂先生は完璧なんです」
「それは褒めてるのか?」
「そうですね、ちょっとくらい隙を見せてくれた方が安心します」
「そうか」
そうつぶやいたあと、なにかを考えるように眉根を寄せる彼。今まで完璧にしか見えなかったのは、失敗が許されない救命の場での彼しか知らなかったからだ。
もっともっと、色んな顔が見てみたい。不思議なことにそう思わされた。