夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「お、お邪魔します」
「桃子の家でもあるから、遠慮するな」
「そう言われましても……」
これほどまでに豪華なマンションにお邪魔するのは初めてだから緊張する。
「桃子はこの部屋を使うといい」
玄関からすぐ右側の部屋のドアを開けると、中はダンボール箱で埋め尽くされていた。
「荷物もすべて運んである」
ベッドだけが置かれ、中は十二畳ほどの広さ。
「ここが狭ければ、もうひとつ空き部屋があるから使うといい」
「いえ……十分です」
ひと通り部屋の中を案内されて、四十畳もあるというリビングの広さには思わず目を剥いた。全面ガラス張りの大きな窓からは、都会の街並みが一望できる。薄暗くオレンジ色に染まる室内はすごく幻想的。きっと、夜景もきれいなのだろう。
家具もすべて海外輸入しているらしい上質なものばかり。
ホワーッと立ち尽くす私に、海堂先生はキッチンの中を案内してくれる。
「憧れのアイランドキッチン!」
白壁タイルがおしゃれでキッチンだけ明るい印象。
「気に入ったか?」
「はい、とても!」
キッチンやシンクは新品のようにきれいで、使われていないのがわかる。冷蔵庫にも食材は一切入っていなかった。今まで食事はすべて最上階のレストランで済ませていたとか。
なんでも素材にこだわったオーガニック料理のレストランで、ヘルシーメニューを多く取り揃えており、評判がいいらしい。
オススメは鶏の唐揚げだと意気揚々と口にした彼の横顔が子どもみたいで、思わず笑った。そこはヘルシーメニューじゃないのね。海堂先生らしいわ。
今度一緒に行こうと言われて、思わず頷いてしまった。
一日があっという間で、特に昨日から生活が一変しすぎてまだ頭が追いつかない。一番驚いたのは、私の勘違いかもしれないけれど、海堂先生がうれしそうだということだ。