夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
どうして?
なぜ?
けれど、今日は私も案外楽しかった。
特に食器を選んでいるときは心が弾んだ。皿に合う料理を考えながら選んだので、届くのが待ち遠しい。このキッチンで早速明日はなにを作ろうか。想像するとワクワクした。
「コーヒーでも飲むか?」
「あ、はい、私が」
「いや、座ってろ」
「でも」
「いいから。コーヒーを淹れるのだけは得意なんだ」
そう言われて、大人しく待つことに。豆から挽いているらしく、機械の音がする。そしてさらにしばらくすると、ゴポゴポと音を立て始めた。
昨日も思ったけれど海堂先生って優しいよね。私を気遣ってくれているのが、すごく意外だ。
コーヒー豆のいい香りが鼻についた。
「ほら」
「すみません」
「ミルクと砂糖はいるか」
「いえ、大丈夫です」
カップを受け取り口をつける。
香ばしい豆の香りとスッキリとしたまろやかな味わい。
あ、美味しい。コーヒーは好んで飲まないけれど、これなら飲める。
「苦手だったか?」
「え?」
「今一瞬眉を動かしただろ」
そんなところまで見られていたなんて。
それにしても、よく見てるな。
「苦手だけど、海堂先生が淹れてくれたのは美味しいです」
そう言いさらに口をつけた。
うん、やっぱり美味しい。
「ならよかった」
ホッとしたように息を吐くと、海堂先生は私の隣に座った。長い脚を組んで優雅にコーヒーを飲む姿はなんとも洗練されていて、まるで絵画にでも出てきそうなくらいサマになっている。