夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「ああ、大丈夫だ。なにも心配いらないよ」
優しく諭すような口調になぜだかモヤッとした。仕事の電話かと思いきや、そうではないような雰囲気。
じゃあなに?
結婚のお祝いの電話?
それともプライベートな用事?
考え込んでいると電話を終えた新さんがくるっとこちらを振り返った。
「すまない」
そう言いながらも無表情で、本当にそう思っているのかはわからない。
「いえ、仲がいいんですね。すみません、名前が見えてしまいました」
「特別仲がいいというわけじゃない。勘違いするな」
べつにそういう意味で言ったわけではないんだけれど。いや、でも、実際少し嫌味っぽかったかもしれない。そんなつもりじゃなかったのに、なぜだろう。面白くなかった。
そんな自分の心境がよくわからない。
「シャワーをお借りしてもいいですか」
とにかく冷静になろう。時間を置けばこのモヤッとした気持ちも忘れられる。
「それは構わないが、どうしたんだ突然」
「どうもしません。私は至って冷静です」
そう、冷静でなければならないのだ。なぜかって、それは……なんでだろう。
脱衣所に案内され、新さんを頭の隅に追いやりながら服を脱ぐ。五月といえど、夜はひんやりしていて肌寒い。軽く身震いしつつ、浴室に足を踏み入れた。
「わ、すごい」
八畳ほどの広さの浴室には、大きめの浴槽が設置されていた。五人くらいなら余裕で入れそうな大きさだ。