夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

「なにかいるものは?」

「いや、特には」

だったらメッセージしなければいいだけなのに。そう突っ込みたかったけれど、満足そうに笑う新さんの横顔を見てたら気持ちがしぼんだ。

コンビニでおにぎり二個とサラダと味付け玉子を買って部屋へ戻ると、コーヒー豆のいい香りが漂ってきた。

新さんは朝はコーヒーだけでいいらしく、優雅にコーヒーを飲む正面でおにぎりを頬張る私。

「今日ぐらいは結婚休暇を取って休めばよかったのに」

「うぐっ、げほ、ごほ」

米が気管に入って胸をトントン叩いていると、すかさず新さんからミネラルウォーターを差し出された。受け取って喉へ流し込む。

「大丈夫か」

「は、はい。すみません。結婚休暇は取れませんよ、まだ誰にも言っていないんですから」

職場の人はこの週末に私が結婚したなんて夢にも思わないだろう。相手が次期院長だなんて、私もビックリだ。

「結婚式は形式上のもので、結婚パーティーはまた別でなさるとおっしゃっていたので、報告はそのときでいいかなと」

「ふーん」

なぜだか言葉にトゲを感じた。

「でも、指輪はちゃんとしておけよ」

「え?」

「外すのは許さない」

有無を言わさない力強い眼差しに抗えず、最終的に私は小さく頷いた。

結婚式は終わったけれど、私たちは入籍もまだで職場の人にも私が一方的に事実を伏せている。

順番がすべてチグハグで、でもだからこそこんなチグハグの関係がうまくいくのか不安で仕方がないからだ。

結婚式は済みました、でも入籍前に別れました。これじゃあ示しがつかないものね。実際その可能性もありうるわけだし。

< 45 / 120 >

この作品をシェア

pagetop