夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
実のところ新さんを完全に信用したわけではない。信用するにはあまりにも日が浅すぎる。まだわからないことの方が多いし、これからと言われればそうなのだろう。
サラダのトマトを口に放り込みながらゆっくり咀嚼する。悠然とコーヒーをすする新さんは、私の視線に気づいて顔を上げた。
「今日は早めに帰ってくるから」
「あ、はい。そういえば荷物が届くんですよね。私の方が早ければ受け取っておきます」
「ああ、頼んだ。ところで俺は車で出勤するが桃子も一緒に」
「私は徒歩で大丈夫です!」
テーブルに身を乗り出す。そこは大事なところなので強調しておかなければ。あれ?でも。
「車通勤なんですね。てっきり電車なのかと思っていました」
二カ月前、電車で男性が倒れたときにいち早く駆けつけてくれた新さんの姿が頭に浮かんだ。
「あ、でもここから病院までは徒歩の距離ですね」
では、なぜあの日は電車に乗っていたんだろう。ここからなら、その必要はないのに。
「あの日は実家からだったんだ」
なんだ、そういうことか。てっきり女性の家にでも泊まっていたのかと思ったじゃないか。なにを疑っているの、私は。
新さんがどこでなにをしていようと、私には関係ないというのに。