夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

「おはようございます、清山さん」

「おはよう、雪名さん! それより、聞いた?」

救急外来横の受付で清山さんは、出勤したばかりの私の肩を興奮気味に叩いた。

「なにごとですか?」

「海堂先生が結婚するんですって!」

思わずギクリとした。もしかして、もう噂になっているの?

いや、でも、まだ誰も知らないはず。

「相手は誰だかわからないんだけど、院長先生がうれしそうに話していたらしいわよ」

「え?」

院長先生が?

「それでね、私、思ったんだけど」

清山さんは満面の笑みを浮かべながら私の耳元にさらに唇を寄せてきた。芸能人のスクープを楽しむ主婦のよう。

「お相手は木下先生じゃないかと思うのよ」

「木下先生、ですか」

なんてタイムリーな。忘れていたのにまた胸の奥がモヤッとした。

「あのふたり、お似合いだと思わない? お互いモテるのに恋人がいないなんてありえないわ。私たちには秘密で付き合っているのよ」

絶対にそうだと決めつけて話す清山さんに真実なんて言えるわけがない。

「ま、それなら私たちにも報告してくれるわよね。はぁー、楽しみだわ」

どうしよう、相手が私だと知られたら幻滅されるかもしれない。新さんは海堂救命救急病院の次期院長という肩書きだけでなく、容姿も身なりも完璧に整ったハイスペックな男性。それだけで病院中の女性の憧れの的なのだ。

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