夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「おい、もういいぞ」
海堂先生に言われるまで無心でマッサージを続けていた私はハッとして動きを止める。
「これから担架に乗せて救急搬送する」
いつしか電車が次の駅に着いていた。ドアが開くと救急隊員が乗りこんでくる。
「ご苦労だったな」
「い、いえ」
思いがけず労いの言葉をかけられ胸の奥底が熱くなった。私でも役に立てるか不安だったけれど、最後にフッと微笑んでくれたところを見ると危惧に終わったようだ。
息が上がり肩が上下している。腕もぷるぷるして小さく震えているし、確実に明日は筋肉痛だろう。それでも次の駅に到着するまでなんとか持ちこたえた。
よく頑張った、私。自分で自分を褒めてあげたい。
海堂先生はどうやら病院まで付き添うらしく、救急隊員と一緒に電車を降りていった。
ということは、行き先は海堂救命救急病院だ。
彼の父が経営する海堂救命救急病院は重軽傷に関わらず、救急車の受け入れを絶対に断らないことで有名だ。
患者がたらい回しにされて結果的に命を落とす事故を防ぎたいというのが院長の口ぐせで、その言葉通り民間の病院ではありえないほどの救急搬送を受け入れている。
彼はそこで働く救命医。だが以前は外科にいたらしく、手術の腕は相当なものらしい。今は救命医として救急外来に立ち、多くの患者の命を救っている。