夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
激しく咳込む新さんにサーッと血の気が引いていく。
悶え苦しんでいる彼のそばに駆け寄るとカレー鍋の蓋が開いていて、疑いが確信に変わった。やっぱり、激辛カレーを食べたのね。
昨日処分するはずが疲れて寝てしまい、朝も時間がなくて結局そのままになっていたせいだ。
「な、なんで、こんなに辛いんだ」
「すみません、とにかく水を!」
私は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して新さんに渡した。ヒーヒー言いながら涙目になり、ゴクゴクと喉に水を流しこむ姿に焦ってしまう。
ものすごく辛かったはずだ。私も相当苦しんだので、そのツラさはよくわかる。
「ごめんなさい、色々考えながら作っていたら激辛スパイスを入れすぎてしまったみたいで」
言い訳なんてみっともないと思いながらも、つい口をついてでる。そうでもしないと、どんな文句を言われるかわからない。いや、結局失敗してるのだから何かしら言われるのは覚悟の上なのだけれど。
「げ、激辛、スパイス……?」
まさかそんなものを俺に食べさせたのかという恨みのこもった瞳に、背中に冷や汗が伝う感覚がした。
「ええ、私、カレーはスパイスから作る派で。いつもはこんなミスなんてしないのに昨日は……」
普段のように作れなかった。
木下先生が気になってとは、とてもじゃないけど言えない。