夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

次第にドキドキと鼓動が速くなって、これから訪れるであろう行為に思わず身体が固まった。そんな私の口元で小さく笑う声がする。

唇が触れそうで触れない微妙な距離に、尋常じゃないほどドキドキさせられた。わざとそこで焦らして熱っぽい瞳で見つめてくるところは、慣れているんだなと思わざるを得ない。

きっと、こんなに余裕がないのは私だけ。

「俺だけ見ていろ」

そんな甘いセリフのあとに彼は目を閉じさらに近づいてきた。

「んっ」

どんなふうに受ければいいのか考えているうちに唇が触れていた。まだ慣れない新さんとのキスに、心臓が早鐘を打つ。

「ん、あ」

これまでは軽く触れるだけだったのに、角度を変えて何度も繰り返されるキスに甘い吐息が漏れる。

全身がものすごく熱い。新さんは顔色ひとつ変えず、余裕があるようだ。女性慣れしているよね。私とできるくらいなのだから、彼にとってはキスなんてなんでもない行為なのだろう。

他の女性というワードにふと浮かんだ顔は木下先生だった。ふたりの姿を想像すると、とてつもなく胸が締めつけられる。

私だけを見ていてほしいだなんて、愛のない結婚なのにどうかしている。

「なにを考えているんだ」

「え……」

< 64 / 120 >

この作品をシェア

pagetop