夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
いつの間にか唇は離れ、心をまっすぐに見透かすような瞳で見られていた。その目は明らかに私に不満があると告げている。
「桃子はいつも、俺といるときにこっちを見ていないだろ」
「そ、それは」
図星なのでなにも言い返せない。ごちゃごちゃと頭の中で色々と考えているせいだ。一途にまっすぐ、新さんを見られたらどれだけいいか。そして、彼にも振り向いてほしいだなんて。
「新さんは、ずるいです」
「ずるい?」
「ドキドキさせるだけさせて、私を好きでもなんでもないくせに。カレーを失敗したのだって、誰のせいだと思っているんですか」
悔しくて悲しくて、つい本音がこぼれた。形だけの相手であろう私に、ここまでするなんて本当にずるい。
「ドキドキしたのか」
なぜかうれしそうに見開かれる彼の瞳。その中に熱が宿ったように見えるのは気のせいだろうか。
「す、するに決まってるじゃないですか。私、男性に免疫がないですし……もし、からかっているだけなら」
やめてください、あなたを目の前にすると落ち着かないから。どうしても冷静でいられなくなる。こんな気持ちは初めてだ。
「からかってなんかいないよ。桃子が俺に、ね」
まだ信じられないとでも言いたげだ。この数日での自分の心境の変化に、私もただただ驚くばかり。