夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「カレーを失敗したのも俺のせいって、どうしてだ」
「言いません」
言えるわけがない。木下先生との関係が気になってぼんやりしていただなんて。これじゃあ新さんを好きだと言っているようなものだもの。
やだ、考えたくない。私は平穏に暮らしたいのよ。情がわかなければ、突然舞いこんだ結婚生活もなんとかなると思っていた。
私が甘かったのかな。他人と生活するのを簡単に考えていたから。淡々とした生活だと予想していたのに、まさかここまで惑わされる事態に陥るなんて考えてもみなかった。
「失敗したのが俺のせいだというなら気になるのは当然だろ」
「今のは聞き流してくれて大丈夫ですから。とにかく、夕食の準備をしますね」
逃げるように新さんから離れ背を向ける。未だに全身が火照って、やけに落ち着かない。ビニール袋から買ってきた食材を取り出してキッチンに並べ、調味料を棚へとしまう。
そしていざ下準備に取り掛かろうとすると、シンク横の食洗機にきれいに洗ったタッパが置かれているのが目に入った。
食べて、くれたんだ?
「うまかった」
私の斜め前に立つ新さんが目を細めて優しく微笑んだ。
初めて見る爽やかな笑みにジワリと顔が熱くなる。