夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

「特にだし巻き卵が絶品だったよ」

せっかく冷めたのに、これじゃあ意味がない。しっかりしなくては。気合いを入れ直して口を開く。

「お口に合いましたか? 基本的に味付けは薄いほうなんですが」

「ああ、好きだ」

いやいや、待て、私。味付けの話であって、私をという意味ではない。早まるな、心臓。どうしてこんなに反応するの。それくらいドキンドキンと、大きく脈打ち新さんに聞こえるのではないかと不安になる。

こんなんでこの先もやっていけるのだろうか。

「そうですか。では夕食の用意をしますので先にシャワーでもどうぞ」

「俺もなにか手伝うよ」

「いえ! とんでもない」

一緒にいるとべつの意味でまた失敗しそうだから、無理に大きなその背中を押して浴室へと追いやる。しぶしぶではあったけれど新さんが折れて、服を脱ぎ始めた。

「す、すみません、すぐに出ていきます」

目のやり場に困るから、せめて私の前では脱がないでほしい。さっきから心臓が忙しなく動いて動悸がすごい。

キッチンに戻ると深呼吸を繰り返して両頬を手でそっと包みこんだ。たしかに感じる熱に戸惑いを隠せず、無意識にため息がもれる。

「ダメだ、このままじゃ」

冷静でなんて、いられない。

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