夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
きっとこれは

一週間後、医事課で請求書の作成に追われていた私は、時計をちらりと見て胸がざわついた。なぜならこのあと、木下先生に誘われているからだ。

病院だとゆっくり話す時間も場所もないからとの理由だけど、なにを言われるのだろうと考えたら不安と緊張でいっぱいだった。

死にものぐるいで仕事を終わらせ、無事に定時に病院をでた。そして指定されたレストランへとスマホの地図アプリを頼りに歩く。

今夜は新さんは当直なので特に予定を伝えてはいないけれど、きっと私の行動に興味がないはずなので構わない。

レストランといっても高級感があふれていて、一般庶民の私には敷居が高そうな雰囲気のお店。

ゆったりした店内にはファミレスのような賑やかさはなく、どこか落ち着ける静かな空間だ。

店員に案内されて席へ通されると、すでに木下先生が座っていた。

「おまたせしてすみません」

小さく会釈して向かい側の席へ座る。

「いえ、無理を言ったのは私のほうだわ。ごめんなさいね」

もっと嫌な人だったらよかったのに。木下先生は美人でサバサバしていて冷たそうに見えるけれど、礼儀正しくはつらつとしていて好感が持てる。

そんな人と比べられたら、とてもじゃないけど勝てる気がしない。

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