夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
「だし巻き卵もあるじゃないか」
「前に好きだと言ってくれたので」
そう口にすると新さんは目を見開いて固まった。
「桃子が俺の好みに合わせて作ってくれたって?」
「そんなにビックリするほどですか」
固まっている新さんに思わず笑みがこぼれる。
「ああ、一瞬頭がフリーズして固まった。仕事中でもなかなかない光景だ」
「あはは、大げさですってば」
どうしてそこまで驚くの。好きだと言ってくれたから、うれしくて作った。ただそれだけ。それでもなぜか新さんはうれしそうにだし巻き卵を見つめ「先にシャワーを浴びてくる」と言ってリビングをあとにした。
なんだか子どもみたい。
思わず頬がゆるんでジワリと顔が熱くなる。いかにも新婚っぽいんですけど。って、新婚か。ついつい忘れがちだけれど。
清山さんに恐ろしいくらい突っ込まれそうなので、仕事中は結婚指輪を外しているけれど、家ではしっかりつけている。
指輪をつけて一日中家で家事をしていたら、なんともいえないほどくすぐったい気持ちになった。
これが本物の結婚指輪なら、どれだけよかったか。
お揃いの夫婦茶碗にお箸、湯呑みをテーブルに並べて新さんが出てくるのを待つ。