夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
足りなかった胸の中のなにかが、新さんの帰宅によってピタリと埋められたような気がする。だって今、とても胸が弾んでいるんだもの。
シャワーから出てきた新さんは髪の毛から水滴が滴り落ちているのも気にせず食卓についた。
「あの、先に髪を乾かしたほうが」
「一刻も早く桃子の作ったものが食べたいんだ。早くしないと冷めるだろ」
「温め直しますので」
「わかったよ」
新さんは叱られた子どものようにしょぼんとしながら首にかけたタオルでガシガシ髪の毛を拭く。
普段前髪で額が隠れているけれど、濡れた髪が逆立ち眉から額にかけてが全開でそれはそれでまたドキッとする。
キリッとした強そうな瞳で見つめられると、たちまち鼓動が跳ね上がって落ち着かなくなる。
「お味噌汁とご飯です。あとはだし巻き卵と焼きサバとほうれん草のお浸しに、昨日の残りの唐揚げが少しですが」
求められてもいないのに、恥ずかしさを隠すために献立を並べ立てテーブルに置く。
「全部桃子が?」
「もちろんです。和食は父に仕込まれたので結構得意なんです」
「そうか」
待ちきれないと言わんばかりに彼は手を合わせて「いただきます」と言ってから箸を持った。