夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

まず最初につかんだのは、だし巻き卵だ。ふわふわのそれを器用に箸でつまむと迷わず口へ持っていき、味わうように咀嚼する。

「うまい」

米とおかずを交互に口へ運び、どれを食べても満足そうに弾んだ声を上げる。大げさだなと思いながらも、褒められて悪い気はしないので私も安心して箸を持ち味噌汁をすすった。

うん、味噌加減がちょうどよくて美味しい。

「当直の夜は桃子のご飯が食べられないと思うと悔やまれるよ」

「そんなに気に入ったんですか、だし巻き卵が」

我慢できず笑ってしまう。すると新さんは小さな咳払いをひとつして、私をまっすぐに見つめた。

まただ、またあの熱っぽい瞳。濡れ髪のせいか、いつもよりもずっと色っぽく見える。

「だし巻き卵がというよりも、桃子と一緒にいてこうやって食事ができたらそれだけで満足なんだ」

どうしてそんなに真顔で心に響くような穏やかな声色で、甘いセリフを吐くの。

「当直で会えない夜はふとしたときに思い出すんだ、桃子を」

なにを言っているの。

「あ、新さんは、どうして私と結婚しようと思ったんですか?」

なにを考えているのかさっぱりわからない。その甘いセリフの意味は?

私のことをどう思っているの?

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