夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
落ち込んでみたところで、なにも変わらないからそのへんにしておこう。それにしてもなぜだろう、昨夜からずっとかすかに胃が痛いような気がするのは。
気のせいかな。痛みには波があってそこまでひどくはないのだけれど。
「ついたぞ」
「へっ!?」
うとうとしかけていると新さんに肩を叩かれた。うっすら目を開けた先には、口角を上げて柔らかく笑う新さんの顔。キョロキョロと辺りを見回す私の頭を軽く小突いた。
「いくぞ」
「はいっ」
シートベルトを外し車から降りた。するとペンギンやアシカのオブジェ、シーパラダイスはこちらと書かれた看板が目に入る。
「水族館ですか」
「そうだ」
へえ、意外。
こんな場所に連れてきてくれるなんて。
「私、水族館って好きです」
「ああ、俺もだ」
さり気なく隣に並んだ新さんは、私の手を取り歩き出した。
「えと、あの」
「いいだろ、休日くらい」
いったいなんの根拠だかよくわからなかったけれど、それでも嫌だとは思わず、握った手から体温が伝わって照れくさかった。
事前にウェブでチケットを購入していたらしく、すんなり受付を通過して館内へ。
順番に見て回っていると思わず頬がゆるんだ。
「あ、マンボウだ! かわいい」
「桃子そっくりだな」
「ちょっと! どういう意味ですか」
ムッと唇を尖らせる私に新さんは終始にこやかだった。
「見ろ、ペンギンがいるぞ」
「わ、本当だ」
「歩く姿がなんとも言えないな」
ペンギンが好きなのかな。ペンギンたちを見つめる新さんの瞳がすごく優しくて、こっちまで穏やかな気持ちになる。
一緒の空間がすごく心地いい。もっとずっとこうしていたい。