夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜

十分ほどしてようやく目処がついたところでお腹が鳴った。

デスクの隅に置いたランチバッグを手に立ち上がり、職員用のカフェレストランへ向かうべくエレベーターの前に立つ。到着して扉が開くと、そこに乗っていた人を見て息をのんだ。

「乗らないのか?」

ポカンと立ち尽くしていると海堂先生は怪訝に眉を寄せて訊ねた。ぼんやりしている場合ではない。

「の、乗ります!」

一階の医事課からカフェレストランがある最上階の六階まではすぐのはずなのに、二人きりの空間が気まずくてドギマギする。

「朝の患者さんは助かったんですか?」

海堂先生を振り返って訊ねると訝しげに眉を寄せた。

名乗りもせずにいきなり不躾だったかな。ヒヤッとするほどの鋭い視線に身が縮こまる思いだ。

『朝の患者』という表現はまちがっていたかもしれない。私にとってはたったひとりの患者でも、海堂先生にとっては多勢の中のひとりにすぎないのだから。

「す、すみません……」

「なぜ謝るんだ? 彼は桃子の心マのおかげで命拾いしたよ」

首から下げている私の社員証を確認したのか、突然名前を呼ばれて驚く。

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